現職の同僚から、「家でご飯って作れなくなるよね?」って言われ、自分としてはそう思ったことが何買ったので整理してみようと思います。ではまず仕事上の前提から
大量調理って、何食からのこと?
「大量調理」という言葉は私が最初に務めた病院厨房では当たり前のことですが、すでに「大量調理施設衛生管理マニュアル」に沿って安全を守るように業務を行う方針でしたので、改めてその基準について整理したことはなかったので、その国の基準を記録として示しておきましょう。
厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」では、適用範囲をこう定めています。
同一メニューを1回300食以上、または1日750食以上を提供する調理施設
この規模になると、家庭の料理とはまったく違うルールの世界に入ります。なお、マニュアル自体はこれより小さい施設にも「趣旨を踏まえた衛生管理を」と求めています。
うーん、前職では一日最大720食ぐらいだったし、食事形態によって同一メニューではない場合も多かった。現職も最大1日360食程度だから、規模としては全然小さい施設になるのですね。
家庭の料理と、何がそんなに違うのか
マニュアルが柱として挙げているのは、次の4つです(HACCPの考え方に基づいています)。
- 原材料の受入れ・下処理段階での管理を徹底する
- 加熱調理食品は中心部まで十分に加熱し、食中毒菌を死滅させる
- 加熱後の食品と非加熱の食品の二次汚染を防ぐ
- 原材料と調理後の食品の温度管理を徹底する
具体的な数字にすると、こうなります。
- 加熱:中心部が75℃で1分間以上(二枚貝などノロウイルス汚染のおそれがある食品は85〜90℃で90秒間以上)
- 保存:調理後すぐ提供しないものは10℃以下または65℃以上で管理
- 冷却:菌が増えやすい20〜50℃の時間を短くするため、30分以内に中心温度20℃付近(または60分以内に10℃付近)まで下げる
- 喫食:調理終了後2時間以内に食べるのが望ましい
- 検食:原材料と調理済み食品を50gずつ、−20℃以下で2週間以上保存
これらについては、私が務めたことのある施設にどちらも共通して守るべきルールでした。この基準を守ることで、業務を行う職員と提供を受ける患者様や、利用者様を守れる規範でした。温度管理と時間管理は測定する機械が正常に動いていれば、そこを目指して業務を組み立てれば良いのです。慣れるまでは本当に大変ですが。
前職と今の職場の違い
前職は、常食と刻み食は基本同一メニュー、ペースト状のすり食と、ペーストをまとめたゼリー食(ペーストを固めて形にした食事)が同一メニュー。更に経管栄養剤(口から食べられない方へチューブで届ける栄養剤)の管理、提供もあったので、これは調理ではなく、提供内容と数のすり合わせと提供があった。
現職は常食と、常食に似た柔らかい食材を使ったソフト食(見た目は普通食に近いまま、舌でつぶせる柔らかさに調整した食事)。ソフト食から作る刻み食とミキサー食(ミキサーにかけて流動状にした食事)。常食とソフト食は見た目には共に常食なので一食分を作る工程が2回分になることで工数が増えている。
ちなみに食事形態の名前や区分は、施設ごとに決められた「約束食事箋」によって違います。同じ「ソフト食」でも中身が同じとは限らないので、ここに書いたのはあくまで私が働いた現場での話です。
特に前職の刻み食と現職の刻み食の刻みの粒は大きさが違いますね。前職はグリーンピースやコーンの粒が半分になっているぐらいが目安。現職だと、全体はペーストに具材の粒々感が少し下に残る程度が目安。前職の刻みが5ミリなら現職は1ミリぐらいでしょうか。
また、前職は治療の一環のなかに食事。現職は栄養管理はしつつも生活の中の一つのために様々なイベント用の献立や混ぜご飯などの希望が多く、混ぜご飯をするとご飯にも味をつけるわけですから、塩分管理が難しくなり相対的により一品一品にさける塩分濃度を薄くしなければいけなくなってしまうのがネックだと感じました。味は欲しいとは言われるが、加工度が高いと素材の風味や本来の味が流れてしまうのにさらに濃度が分散されると難しいなと思います。追加したら栄養管理の意味がなくなりますし。
※前職と今の職場の違いは、味噌汁の作り方でも驚いたことがありました。
いま苦戦していること
おやつの工数がメニューによって全く異なる。食事形態に関わらず共通して用意して30分で作業が終了するものもあれば、形態別に数を把握して加熱、盛り付け、冷却して、数別に振り分けを整え直すために、2時間もかかる物があって困っている。作業時間が4倍になれば、残業も増えてしまうもの。
で、なぜ家でご飯が作れなくなるのか
ここで、家庭で作る食事との大きな差は、仕込みではないでしょうか?家庭では下処理になるところでしょう。大量調理では材料を切ったり数を把握しておいて加熱処理、非加熱処理つまりは調理作業は喫食2時間前からになります。大量調理マニュアルに沿うので。となると、テンポと食材の分量感が狂って家庭の規模での食事を作る感覚が抜けてしまいやすくなるのだと思います。
※本記事で引用した基準は、厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」(平成9年3月24日付け衛食第85号別添/最終改正 平成29年6月16日付け生食発0616第1号)によります。2026年8月時点の情報です。
